<第189代国王 涯>
V.suspense(緊張感)
あぁ、まただ。
どうしてこんな間の悪い場面に出くわしてしまうのか。
階段の踊り場には、明らかに親密な妻と男。
怯えなくてもいい。
もともと期待していない。
どうせお前もそう思っているのだろう?
お前は私に、見当違いの畏怖しか向けてこない。
世継ぎを産むためだけに嫁いできた女よ。
王子を産んだその後は、お前の好きにするがいいと、お前は私に言わせたのだ。
「今日は早いな」
これも皮肉に聞こえるだろうか。
勝手にすればいい。
お前が誰といようと、私には何の支障もない。
あるとすれば……くだらない官僚の憶測が、うっとうしいだけ。
そうなったときには、迷わずお前たちをここから追い出してしまおう。
だからせいぜい、楽しめばいい。
束の間の幸せが得られることは、本当は幸福なことなのだから。
この私には、そのようなものは決して与えられない。
求めない私の咎だと言うのかもしれないが。
「あなた、執務の、時間なのではなくって……?」
お前は硬直した頬に微笑を貼り付ける。
「そうだな」
見て見ぬふりをしてやろう。
そうして私に罪悪感を抱いているうちは。
どのみち初めから、お前に興味はなかったのだから。
愛などというものが欲しいのなら、勝手に貰いに行っていいよ。
私には与えられないものだ。
Copyright(c) 2008 all rights reserved.