<第189代国王 涯>
U.allegory(たとえ話)
「お前、死ねって言ったらどうする?」
唐突に聞いた。
「たちの悪いご冗談を」
けれど、落ち着きを払って、動じない。
動揺するような人物に、王の側近は務まらないし、外交に携わるならなおさらのことだ。
「では、たとえばお前が死ねば私は死なずにすむとしよう。それならどうする?」
努めて真摯に、語りかける。
「この身も命も、全ては貴方様のために」
答えは予想通り。
それ以外の答えなど許されないのだから、当たり前かもしれない。
そんなことをすれば首が飛ぶのが、王族へ不敬な言動を取った者の常だ。
もちろん、答えをためらうことも、窮することもない。
なんて忠実な臣下の言葉。
でも、欲しいのはそんな言葉じゃないんだよ。
その動かない表情の下で、お前は何を考えているのだろうね。
私に背こうとしている?
そんなことをお前に言えば、疑心暗鬼に駆られていると否定するだろう。
その言い訳が嘘か本当かなんて、私にとっては無意味なことだと知らずに。
だってお前達が見ているのは、私ではないから。
忠誠も逆心も、私には向けられていない。
「陛下?」
「単なるたとえ話だ、忘れろ」
畢竟私は、ただの王。
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