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3章




 人は人を裏切る。
 それはいつの時代も同じこと。
 そうして生きてきた、人という生き物。

 争い、血が流れる。
 憎み、恨み────。

 また人は、裏切る。

 それが、人。


 裏切りは、ここにある。
 人が人であるが故に。
 人であることをやめぬ限り。
 心を、捨てぬ限り。



「どうなさいますか?」
 そう問いかけた人物は、特徴の無いといって差し支えない、奇妙な雰囲気の壮年の男だった。酷薄な印象を抱く笑みを刻んだ唇が、淡々と言葉を紡ぐ。
 男の問に、若いというにはあまりに達観した表情の女性が答えた。
「連れ帰れ」
「……生かして、ですか?」
 かすかに意外そうに、彼は問う。
「そうだ」
「────では、そのように」
 わずかな沈黙の後に返ってきた声には、感情も意思も感じられない。全てを消して、足音ひとつなく、男は部屋を出て行く。
「分かっているな? 余計なことは、するな」
 その言葉の意味を十分に理解した上で、男は答える。
「余計なことなんて、しませんよ」
 得体の知れない雰囲気はそのままに、彼は双眸を細める。
 その手の中で、研ぎ澄まされたナイフが踊った。


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