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1章




 世界には、2つの大陸があると言われている。
 しかし、その2つの大陸を見たことのある者は、おそらくいない。
 なぜなら2つの大陸の間には大海があるからだ。
 大陸から大陸へと渡ろうとした多くの人々の行く手を阻んだ。入り乱れる複雑な海流は巨大なガレオン船をも沈め、乱気流と突風に遮られて、ついに人々が海を渡ることは叶わなかったという。
 そうして独自の文化をたどったそれぞれの大陸。その1つを、そこに住む人々は「飛鳥アスカ大陸」と呼ぶ。
 また、海を隔てて南側にあるらしいこの大陸のことを、ただ単純に南大陸と呼ぶ者もいる。対照的に、まだ見ぬもう1つの大陸を、人は北大陸と呼んでいる。

 飛鳥大陸はその南に高山が連なっている。登ることの不可能な程の切り立った岩肌、そしてその麓に広がる広大な樹海。
 山の名を、「天境テンキョウ」といった。
 その由来は、天と地とを分けるからとも、天への門が存在するからとも言われる。
 この山には、伝説がある。
 そこに「神」が棲むと、そう信じられているのだ。
 しかし、一度入れば二度と出られないというその麓の樹海に、人は足を踏み入れることを躊躇い、神を探し出すことはしなかった。


 飛鳥大陸の人々は、不思議な能力を持っている。
 地水火風をはじめとする多種多様な能力があるが、力の強さにはかなりの個人差がある。そのため能力に頼って生活をする者はほとんどいない。
 水は井戸から汲み上げるし、火を起こす時には炭を使う。
 そして、戦争をしたければ、兵を集めて剣で戦う──。
 世界は平和で、時に争いも起こった。
 飛鳥大陸において、その象徴ともいえる2つの国家。
 西は世界一の大国にして平和国家、崔繍サイシュウ
 東は新興軍事国家、ロン
 二大国家は今のところ、相互不干渉により均衡を保っている。
 この2つの国が戦争でも始めようものなら、間違いなく飛鳥大陸全土を巻き込むことになろう。
 しかし、人々にそんなことは関係なく、目下のところ日々の生活がごく普通に送れれば、それでいいのである。

 飛鳥大陸の南西に位置する町で、彼らもまた、なんでもない日常を送っていた。


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